清川あさみ Serendipity (Phantasm), 2024, mixed media, 136.0 x 136.0 x 2.6 cm

清川あさみ 「神話の糸」

MAKI(天王洲)
明日まで

アーティスト

清川あさみ
MAKI Gallery ではこのたび、日本人アーティスト清川あさみによる個展「神話の糸」を天王洲ギャラリースペースにて開催いたします。本展は 2024年夏に鹿児島県・霧島アートの森にて開催された清川の特別企画展「ミスティック・ウィーヴ:神話を縫う」を引き継ぎながら、過去から未来へと続く人類の物語を自然と都市、伝統とテクノロジーの交差点で紡ぎ直す試みとなります。

霧島での展示において清川は、写真に刺繍を施す独自の手法を用いたこれまでの代表作と、霧島の自然を背景にした最新作を発表しました。それらを通じて現代社会が抱える複雑さと美しさを表現すると同時に、人間と自然の新しい関係性を探ることに挑みました。テクノロジーの発展や都市化によって自然との距離が広がり続ける今日において、自然そのものを作品の一部として取り込んだインタラクティブなインスタレーションを制作し、人間も自然の一部であるという感覚を来場者に体験してもらう空間を創出しました。

これは単に自然を表現の対象として描き出そうとしたのではなく、技術との融合を通じて新しい未来像を探る挑戦でもありました。清川の試みの本質は、気候変動や生態系の破壊といった現代社会の課題を批評的に描くことではなく、ポジティブな未来像を提示すること、そして鑑賞者が自ら未来への物語を紡ぐ契機を提供することにあるのです。

本展及び霧島での展覧会のタイトルに含まれる「神話」について、清川は次のように述べています。
「私は神話や幻想を「未来へのメッセージ」として捉えています。それは人類が過去に世界をどう理解し、未来にどのように進むべきかを示す「タイムレスな物語」だからです。特に現代の急速な社会変化の中で、神話は人間の根源的な価値を問い直す重要なヒントになると考えています。」

このような考えのもと清川はこの世界のあり方や社会規範を形成し、何千年もの間人類文化の礎となってきた日本そして世界の神話を参照しながら、現代が抱える課題―環境問題、アイデンティティ、テクノロジーや権力のあり方など―に対する新たな視点を表現しようとしています。それは想像を絶するほど長い時間軸を遡ってどんな既存の価値観も存在しなかった始原の混沌へと私たちを引き戻し、全く新しい視点から世の中を、そして人間の存在を紡ぎあげていくことを促すようでもあります。

また霧島という日本神話と深い縁を持つ地を離れ、本展を東京で開催することについて清川は、「自然と人間の分断が象徴的に表れる都市空間においてこそ、その中に自然の美しさや力強さを取り戻すことには特別な意義がある。」と語ります。現代において都市と自然は対立する要素として捉えられがちです。しかし清川はそれらを相反するものとして扱うのではなく、独自の刺繍技法を用いて「都市と自然を織り込む」ことで、都市という複雑な空間においても自然や神話と対話することを可能にします。そうすることで新しい時代に必要な価値観を鑑賞者と共有しようとしているのです。

そんな清川の試みを象徴的に表すのが本展の中心を成す「Serendipity」シリーズです。「Serendipity(Phantasm)」は「未来の神話」をテーマに絵画に刺繍を施し、自然と都市、希望と不安が交錯する空間を描いた新作です。自然の光の揺らぎをデジタルで再現し、その背景に不穏な都市のシルエットを浮かび上がらせています。「Serendipity(偶然の中に隠された幸運)」が示す未来への希望と、「Phantasm(幻影)」が表現する都市に潜む不安や不確実性。この対比を通じて清川は、現代社会が抱える課題と新たな調和の可能性を描き出しています。

さらに本展では現実世界の曖昧さと魅力を表現した「HAZYDREAM」や、現代社会のあやふやな様と不安を浮き彫りにし、新しい自己を見出そうとする若者たちの姿を描いた「MONSTER」シリーズなど、過去の作品も展示いたします。相互に補完し合う各シリーズの作品を一堂に展示することで、現実と神話、可視と不可視の境界線上にある世界を浮かび上がらせ、普遍的で時代を超えたテーマのさらなる探求を目指します。

清川のアーティストとしての活動は、個人の内面や感情を描いた初期の作品から、社会全体や地球規模のテーマを扱う現在の作品へと大きな変化を遂げてきました。しかし、その根底にある「人間の本質に問いを投げかける」という姿勢は一貫しています。自然と都市、伝統とテクノロジー、個人と社会といったテーマに対して、これまでにない視点で考えるきっかけを生み出したいと強く願う清川。そんな作家が神話の世界に鑑賞者を誘い、新たな時代の価値観をともに探ろうとする本展を、どうぞ会場にてご高覧ください。

スケジュール

開催中

2025年2月1日(土)〜2025年3月29日(土)明日まで

開館情報

時間
11:3019:00
休館日
月曜日、日曜日
入場料無料
展覧会URLhttps://www.makigallery.com/exhibitions/11829/
会場MAKI(天王洲)
https://www.makigallery.com/ja/
住所〒140-0002 東京都品川区東品川1-33-10 TERRADA Art Complex 1F
アクセスりんかい線天王洲アイル駅B出口より徒歩9分、東京モノレール天王洲アイル駅南口より徒歩10分、京急本線新馬場駅北口より徒歩9分、JR品川駅港南口より都営バス「天王洲橋」下車徒歩4分
電話番号03-6810-4850
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