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小倉涌 「マッカーサーの子供たち - 八月革命 - 」

unseal contemporary
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アーティスト

小倉涌
小倉涌は、2010年に東京で開催した個展「マッカーサーの子供たち」で注目を集めました。作品は、先の戦争で敗北してから 65年が経過した 2010年代に入った今日、若い世代のみならず、日本人全体が忘却のかなたに追いやっている敗戦前後のありさまを、「当時の生きたアイコンであった天皇とマッカーサーの少年化」、あるいは「戦死した日米の兵士たちの生前写真で飾られた、降伏調印の場所であった米戦艦ミズーリ」など特異なイメージをリアリズムの手法で再現し、強い印象を与えるものでした。
小倉自身が発言しているように、これらの作品は現代美術ではジャンルとしてほとんど捨てられてしまった「歴史画」に分類できるものです。現代美術も歴史や政治に無関心ではなく、さまざまな切り口でそのあり方を批判的に取り上げてきていますが、少なくとも日本の現代美術についていえば、政治対立が激しかった 50~60年代以降、歴史的出来事を戯画化し、主観的であることを全面肯定して描くことはあっても(たとえば 2000年代に入ってからの、会田誠『紐育空爆之図』や村上隆キュレーションの『リトルボーイ』、さらには最近では Chim↑Pom の活動など)、内面化の方法をとらず、正面から歴史的テーマを取り上げる作品はこれまで極めて稀でした。
ただ「歴史画」とカッコに入れるのは、やはり歴史と人間がリニアに結びつくとされた近代の歴史観にもとづく伝統的な歴史画(戦前の「戦争画」がそうであったように)の再興はもはやありえないからです。主観のバイアスのかかったさまざまな歴史像が併存するのは避けられません。したがって、カッコつきであれ小倉の作品をあえて歴史画と呼ぶのは、バイアスを自覚しつつ、それでも「正面から歴史的テーマを取り上げる」ことによって人びとを歴史的視座へ挑発し、いざなおうとする姿勢ゆえです。そこから何を読み取るかは、ひとえに観る者に委ねられています。
他方、3.11の大震災や福島原発事故は、かってそう形容された「終わりなき日常」がつかの間のものであったことを否応なく私たちに突きつけるものでした。その結果、現在さまざまな領域で現代のルーツである「戦後日本のありかた」(さらにはその前史をなす戦前の日本のそれ)を再検討しようという試みが始まっています。現代美術の分野も例外ではありせん。日本の敗戦に焦点を当てた小倉の「歴史画」は 3.11以前から始まってますが、今、時代とシンクロしはじめたと言えるのではないかと思います。
今回の展覧会は「敗戦直後のパラドクシカルアな日本を描く」というテーマを継承しながら(本来は戦勝国の支配者として認識されるはずのマッカーサーがアイコンとして日本人から大きな支持を集めた事実)、戦争に巻き込まれていった当時の庶民の心性風景も組み込んだ作品群で構成されます。
小倉作品を前にどう歴史のバックラッシュを体験するか、またそれ私たちの今がどう反応するか、経験していただければ幸いです。

[画像:「13maidens' prayer」 Board (48x84cm) 油彩/テンペラ混合技法]

スケジュール

2012年10月5日(金)〜2012年10月27日(土)

開館情報

時間
12:0019:00
休館日
月曜日、火曜日、水曜日、木曜日、祝日
備考
開場時間: 13:00〜20:00

オープニングパーティー 2012年10月5日(金) 18:00 から 20:00 まで

入場料無料
会場unseal contemporary
http://www.unseal.jp/
住所〒103-0002 東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17
アクセスJR馬喰町駅より徒歩4分、JR・都営浅草線浅草橋駅より徒歩4分
電話番号03-5641-6631
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