日本政府が新型コロナウイルス感染拡大防止のため、大規模なスポーツや文化イベントの自粛要請を行ったのが2月26日。そこから多くの美術館が休館し、イベントは中止となり、実空間でのアーティストの作品発表の場は減少している。
いっぽう世界各地では国、市、個人といった様々なレベルでアーティストに対する緊急助成金が立ち上がっているなか、東京都は「活動を自粛せざるを得ないプロのアーティストやスタッフ等が制作した作品をウェブ上に掲載・発信する機会を設ける」という支援策を打ち出した(ウェブ版「美術手帖」)。
アーティストはこの状況下で何を思い、東京都のアーティスト支援策について何を考えているのか。全8回の連載「いま、何を考えていますか? アーティストに4の質問」では、東京圏で活動するアーティストに4の質問を投げかける。
第1回は、美術家の会田誠。
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毎日ネットを茫然と見ている。3.11の時と同じく、人々の動きを俯瞰して見ている(今回はワールドワイドだが)。特に偉そうに語れることはない。不安な時代に身を委ねてる。
正直に書くと、家飲みによる自分の酒量の増加。
日本に住む全員に一律現金を振り込むのが良いと思う(その現金が不要な高額納税者にはのちに課税を上乗せすればいい)。一時的な消費税減税や、電気・ガス・水道料金などを国が払う方式などを合わせるのも良いかもしれない。とにかく公務員に負担をかけない簡便な方式が良い。
「芸術家」というアイデンティティを公的機関に対して証明することは平時でも難しい。刻々と移る時代の中にある「芸術」の定義付け、あるいは、今は芸術と呼ばれてないが、将来的には存在意義が高くなる文化ジャンルの特定は難しい。確実には、数十年過ぎて回顧・検証する時間が必要。だからそれらの手続きはこの緊急時に一律放棄するのがベター。
ただ、近い将来日本文化を創造的に刷新する者は、今現在経済的に恵まれておらず、今回のコロナ禍で文化的活動の維持(場合によっては生命の維持)が困難な状況に陥っている者が多いことは確かだろう。彼らになるべく漏れなく支援を届けるには、前述の方法がベターである。
劇場・ライブハウス等「民間のハコ」に対する救済は別途あるべきと思うが、僕は詳しくないので、詳しい人の見解が聞きたい。
とはいえ人間は可塑的である。生々流転。希望はあらゆるところにある。ウイルスは敵ながらあっぱれと思う。
会田誠
1965年新潟県生まれ。1991年東京藝術大学大学院美術研究科修了。絵画、写真、映像、立体、パフォーマンス、インスタレーション、小説、漫画など表現領域は国内外多岐にわたる。近年の主な個展に「天才でごめんなさい」(森美術館、東京、2012-13年)、「考えない人」(ブルターニュ公爵城、ナント、フランス、2014年)、「世界遺産への道!!~会いにいけるアーティストAMK48歳」(霧島アートの森、鹿児島、2014年)、「ま、Still Aliveってこーゆーこと」(新潟県立近代美術館、2015年)、「GROUND NO PLAN」(青山クリスタルビル、2018年)など。自身2作目となる長編小説『げいさい』が2020年夏に刊行予定。
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いま、何を考えていますか? アーティストに4の質問
第1回:会田誠
第2回:百瀬文
第3回:Houxo Que
第4回:梅津庸一
第5回:遠藤麻衣
第6回:金瑞姫
第7回:磯村暖
第8回:高山明