今夏、横浜市中区の京急線「日ノ出町駅」から「黄金町駅」間の高架下周辺のスタジオや既存の店舗、屋外空地にて、『黄金町バザール2017 – Double Façade 他者と出会うための複数の方法』が開催される。
会期は[vol.1]の2017年8月4日(金)~9月13日(水)と、[vol.2]の2017年9月15日(金)~11月5日(日)の前後2会期。
2008年より毎年開催している「黄金町バザール」は、横浜市の初黄・日ノ出町地区で地域のまちづくりに取組む「初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会」と「NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター」が共同主催となり、まちを舞台に国内外のアーティストの作品を紹介するアートフェスティバルだ。
今年で10回目を迎える黄金町バザールは、これまでの歩みを踏まえるとともに、アジアの多文化性と地域コミュニティの関係性をテーマに開催する。
舞台となる初黄・日ノ出町地区は、かつて約260店舗の違法風俗店舗が軒を連ね、まちの商店や地域住民の転出が生じるなど、生活環境の悪化が深刻な問題となっていた。2005年の神奈川県警察本部による一斉取締の後、まちの賑わいを取り戻すために地域、警察、行政、企業、大学が連携し、安全で安心なまちの再生という課題に取組んできた。
そして2008年の第1回目「黄金町バザール」開催を機に、アーティストの日常的な活動場所としてまちを開き、異なる文化的背景をもつアーティストたちが集まるエリアへと変化している。多様な文化や世代が共存し、まちに新しい人と人との関係や時間の流れを生み出す活力となっている。
なお、「黄金町バザール2017」は、3年に1度横浜を舞台に開催される「横浜トリエンナーレ」の連携プログラムとして、会期を合わせて実施される。また、先日ファイナリストが発表された「日産アートアワード2017」も横浜トリエンナーレとの同時期開催が決定しており、この期間は横浜のまち一帯がアートで活気付くことになる。
ゲスト・キュレーターはKENJI KUBOTA ART OFFICEの窪田研二
「黄金町バザール2017」は、ゲスト・キュレーター制を導入をする。2014年の原万希子以来、2回目の試みとなるゲスト・キュレーターは窪田研二が務める。
窪田は、上野の森美術館、水戸芸術館現代美術センター学芸員を経て2006年よりインディペンデント・キュレーターとして活動し、2008年よりKENJI KUBOTA ART OFFICE代表。『Red Bull Music Academy: ART Exhibition』(レッドブル・ジャパン、2014年)、『Don’t Follow the Wind』(福島の帰還困難区域内某所、2015年-)他、国内外の展覧会キュレーションを多数手がけた実績を持つ。
黄金町バザールディレクターの山野真悟は、「今年はゲスト・キュレーター制の導入によって、客観的な視点から黄金町の課題を捉えるとともに、より広範な現代社会の課題に対面し、介入しようとする現在のアートシーンの一面を伝えることを試みました。 今回の展覧会を通して、私たちは観客の皆さんとともに、お互いの異質性と共通性を理解し、お互いが敬意を持って共存することが出来る世界を構想するという課題について考えてみたいと思います」と述べている。
参加アーティストは国内外で活動する23組
6月16日現時点で発表されている参加アーティストは、毒山凡太郎、Chim↑Pom(チン↑ポム)、チョウ・チーファ、キュンチョメ、地主麻衣子、宇佐美雅浩、ジェイビー・デル・ロザリオ、菅実花、スザンヌ・ムーニーなど国内外で活動する23組。
6つのスペシャル・プログラムを開催
また、6つのスペシャル・プログラムの詳細も明らかになった。
[プログラム1]は、マイノリティから生まれたVogue(ボーグ)ダンスのダンサーで、タイを拠点に活動するサン・ピッタヤー・ペーフアンを講師に迎えたワークショップと、一夜限りのBallroomイベント『私じゃなかった身体たち – みんなで踊るヴォーグダンス』。
[プログラム2]は、「バザールコレクターズ・オークション」と題し、美術家の松蔭浩之をオークショニストに、地元住民を招いた「お金のかからないオークション」を開催。落札された作品が会期中に落札者の自宅や商店に飾られ、その記録を展示する。
[プログラム3]では、ヘルシンキを拠点に活動するテレルヴォ・カルレイネンとオリヴァー=コフタ・カルレイネンが2005年に始め、世界各地で実地しているプロジェクト「不満の合唱団」が黄金町のまちに降り立つ。作曲家の西井夕紀子とコラボレーションし、地元から集めた合唱団のメンバーと『不満の合唱団 in 黄金町』を作り上げ発表する。
[プログラム4]は、演劇の枠組を超え、都市や社会に介入するプロジェクトを展開する高山明/Port Bの『遠くを近くに、近くを遠くに、感じるための幾つかのレッスン』。フランクフルトで展開された『マクドナルド放送大学』は、シリアやアフガニスタンといった様々な国からドイツに来た難民が「教授」となり、実際のマクドナルドで「授業」を行った。本作品は、この授業を横浜の「難民」が朗読する試み。観客は船上でこの「授業」を聴くことになる。
[プログラム5]は、地元住民を対象としたワークショップを通して、まちの記憶を描いた作品を展示する『黄金町の歴史と記憶を辿るウィンドウギャラリー』。
[プログラム6]は、なぜアートがまちに出たのかを再考し、これからどこに向かうのかを3日間に渡って議論するシンポジウム『まちに出たアートはどこへ向かうのか?』。
「黄金町バザール2017」は、会期中有効のフリーパス(700円、当日券のみ、中学生以下無料)のほか、 同時期に開催する「ヨコハマトリエンナーレ2017」と「BankART Life V」にも入場できる連携セット券([前売]一般 2,100円/大学・専門 1,500円/高校生 1,100円 [当日]一般 2,400円/大学・専門 1,800円/高校生 1,400円 )がある。
チケットを手に、今年の秋は横浜各地で開催されるアートの祭典を楽しんでみてはいかがだろうか。
■開催概要
タイトル:黄金町バザール2017 − Double Façade 他者と出会うための複数の方法
会期:
[vol.1]2017年8月4日(金)〜 9月13日(水)
[vol.2]2017年9月15日(金)〜 11月5日(日)
会場:京急線「日ノ出町駅」から「黄金町駅」間の高架下スタジオ、周辺のスタジオ、既存の店舗、屋外空地、他
開催時間:11:00 ~ 18:30 ※10月27日〜29日、11月2日〜4日は20:30まで開場
休場日:第2・4木曜日
主催:認定NPO法人黄金町エリアマネジメントセンター、初黄・日ノ出町環境浄化推進協議会
共催:横浜市
ディレクター:山野真悟
ゲスト・キュレーター:窪田研二
参加アーティスト:
Atsuko Nakamura + 陳亭君、毒山凡太郎、キャンディー・バード、チェン・ティンロン、Chim↑Pom、チョウ・チーファ、チョン・ボギョン、キュンチョメ、地主麻衣子、宇佐美雅浩、ジェイビー・デル・ロザリオ、菅実花、人見紗操、イ・セヒョン、有川滋男、スザンヌ・ムーニー、マツダホーム、プ・ユン、高山明/Port B、サン・ピッタヤー・ペーフアン、松蔭浩之、西井夕紀子、テレルヴォ・カルレイネン + オリヴァー・コフタ=カルレイネン
ウェブサイト:http://www.koganecho.net/koganecho-bazaar-2017/
Text: Kyo Yoshida