ミュージアムショップでは、好きな作家の作品や展覧会で見つけたお気に入りの作品を、手軽にグッズとして手に入れることができます。ミュージアムショップが、展覧会を見たあとの”もう1つの楽しみ”だという人もいるのではないでしょうか。
今回はそんなミュージアムショップに詰まったこだわりを探るべく、東京国立近代美術館で開催中の『トーマス・ルフ展』の特設ショップを取材してきました。
『トーマス・ルフ展』の世界観が楽しめる RUFF SIZE SHOP
本展は、ドイツを代表する現代写真家トーマス・ルフの日本初の大規模回顧展です。ルフは、写真を大きく引き伸ばしたりデジタル加工処理を施したりすることで、写真の可能性を探ります。
RUFF SIZE SHOPと名付けられた展覧会特設ショップに入ると、なんだか違和感が?! そう、その名の通り、ショップには通常の4倍ほどの大きさのマグネットや、A3のクリアファイルなど、ふつうよりも一回り大きな「ルフサイズ」のグッズが並んでいます。
「ルフの大きく引き伸ばされた作品のサイズ感とリンクさせて、グッズも一回り大きくし、作品をグッズの全面に印刷したのがこだわった点です。」
そうお話して下さったのは、グッズの製作とショップの運営を行っている、株式会社Eastの松林環美さん。本展の図録のブックデザインも手がけたデザイナーの田中義久氏の監修のもと、グッズを作っていったそうです。
「通常の4倍のサイズのマグネットをつくるには、ポッティング(透明の樹脂で表面をコーティングすること)する際にどうしても気泡が入ってしまい、加工してくれる業者さんを探すのに苦労しました。」(松林さん)
展示室のようなショップ空間
RUFF SIZE SHOPの正面の壁には図録がずらりと並んでおり、その上には「THOMAS RUFF」の文字が。展覧会のポスターなどにも印刷されているこの「THOMAS RUFF」の文字も田中義久氏がデザインしたもので、その下に田中氏が手がけた図録を置くことで、まるでインスタレーションのように見せるねらいがあるそうです。
また、今回ショップのデザインを考えるにあたって、展示室といったん切り離されつつも、つながりが感じられることを重視したといいます。そこで、壁の色は展示室と同じ白に。普段は展覧会と差をつけたり、お買い物をする場ということで高揚感を高めるような明るい色にすることが多いそうですが、今回はシンプルさを意識し、グッズの存在感を高めることで、展示室のような空間をつくりました。
ルフの作品をまとって出かけよう!人気のトートとTシャツ
グッズの中で1番人気のある商品は、トートバッグとTシャツ。中でも「nudes」シリーズの写真を印刷したものは特に人気で、どちらも一時は品切れになってしまったそう。
Tシャツは小さく折りたたまれて売られているので、おみやげにまとめ買いするお客さまも多いとか。
「Tシャツの写真の部分を全面に見せるかたちでパッケージングしてレジ裏に並べることで、レコードジャケットが売られているようなイメージにしました。」(松林さん)
なるほど、グッズの見せ方にもこだわりがつまっているんですね!
なお、レジの横には、展覧会開催記念として期間限定販売されるルフ作品のエディションも掲出されています。こちらはショップでの店頭販売はなく、公式ホームページから購入が可能です。
文字を書くのがもったいない?!天体写真が美しいノートブックとレターパッド
ショップの中で印象的だったのは、壁に貼られた「Sterne」シリーズの《16h 30m/-50°》。
こちらも田中義久氏がデザインを手がけており、作品選びにもこだわりが。元の作品が”宇宙空間を切り取って写真にした”ものであったため、それをさらに細かく分割することで、作品のコンセプトとリンクさせたそうです。ノートをめくっていくと、宇宙から切り取られた天体の写真をさらに覗きこんでいくような感覚が味わえます。1ページとして同じページはなく、まるで絵本を読んでいるよう。ショップを訪れた際には、ぜひ手に取って見てみてください!
ルフの作品の上でごはん、も夢じゃないかも?オリジナルレジャーシート
『トーマス・ルフ展』に行った際には、美術館の外にも要注目。こちらは、美術館の前庭に飾ってある、ルフの作品をほぼ原寸大でプリントしたレジャーシートです。(※晴天時のみ前庭に展示)
こちらも製作するうえで、この大きさのレジャーシートに印刷・コーティングを行うのはなかなか大変だったとか。原寸サイズの販売はありませんが、会期中、ショップにて約1/2サイズのものが受注販売されています。
今回お話を伺って、グッズのデザインから見せ方まで、「RUFF SIZE SHOP」にはさまざまなこだわりが詰まっていることがわかりました。グッズには作品のコンセプトが生かされていることを知って、グッズを見るのがより楽しくなったと同時に、もう一度展示をじっくり見てみたいと思いました。展覧会のショップやミュージアムショップを通して、展覧会をまた違った側面から楽しむことができるかもしれません。
『トーマス・ルフ展』は11月13日(日)まで開催中です。展覧会を楽しんだあとは、ぜひショップにも注目してみてください!
[TABインターン] 小原菜実子: 美術史を専攻している大学生。アイルランドでケルト美術に魅せられたのをきっかけに、西洋中世美術を中心に勉強中。埼玉県民であり、関東の第3位は千葉ではなく埼玉だと思っている。3度の飯よりダンスが好き。