公開日:2016年10月21日

ミュージアムショップにいこう!『トーマス・ルフ展』編

美術館のもう1つのたのしみ。一回り大きな「ルフサイズ」のグッズに詰まったこだわりをご紹介!

ミュージアムショップでは、好きな作家の作品や展覧会で見つけたお気に入りの作品を、手軽にグッズとして手に入れることができます。ミュージアムショップが、展覧会を見たあとの”もう1つの楽しみ”だという人もいるのではないでしょうか。
今回はそんなミュージアムショップに詰まったこだわりを探るべく、東京国立近代美術館で開催中の『トーマス・ルフ展』の特設ショップを取材してきました。

『トーマス・ルフ展』の世界観が楽しめる RUFF SIZE SHOP

本展は、ドイツを代表する現代写真家トーマス・ルフの日本初の大規模回顧展です。ルフは、写真を大きく引き伸ばしたりデジタル加工処理を施したりすることで、写真の可能性を探ります。

RUFF SIZE SHOPと名付けられた展覧会特設ショップに入ると、なんだか違和感が?! そう、その名の通り、ショップには通常の4倍ほどの大きさのマグネットや、A3のクリアファイルなど、ふつうよりも一回り大きな「ルフサイズ」のグッズが並んでいます。


なかなか見ない大きさのグッズが並びます
なかなか見ない大きさのグッズが並びます

「ルフの大きく引き伸ばされた作品のサイズ感とリンクさせて、グッズも一回り大きくし、作品をグッズの全面に印刷したのがこだわった点です。」
そうお話して下さったのは、グッズの製作とショップの運営を行っている、株式会社Eastの松林環美さん。本展の図録のブックデザインも手がけたデザイナーの田中義久氏の監修のもと、グッズを作っていったそうです。

ポストカードほどの大きさの「RUFF SIZE MAGNET」
ポストカードほどの大きさの「RUFF SIZE MAGNET」
しかし、グッズを作る際には、この大きさならではの大変なこともあったそう。
「通常の4倍のサイズのマグネットをつくるには、ポッティング(透明の樹脂で表面をコーティングすること)する際にどうしても気泡が入ってしまい、加工してくれる業者さんを探すのに苦労しました。」(松林さん)

展示室のようなショップ空間

RUFF SIZE SHOPの正面の壁には図録がずらりと並んでおり、その上には「THOMAS RUFF」の文字が。展覧会のポスターなどにも印刷されているこの「THOMAS RUFF」の文字も田中義久氏がデザインしたもので、その下に田中氏が手がけた図録を置くことで、まるでインスタレーションのように見せるねらいがあるそうです。

また、今回ショップのデザインを考えるにあたって、展示室といったん切り離されつつも、つながりが感じられることを重視したといいます。そこで、壁の色は展示室と同じ白に。普段は展覧会と差をつけたり、お買い物をする場ということで高揚感を高めるような明るい色にすることが多いそうですが、今回はシンプルさを意識し、グッズの存在感を高めることで、展示室のような空間をつくりました。

展示室のすぐ外にあるショップ。シンプルな空間で、展覧会の世界観がいかされています
展示室のすぐ外にあるショップ。シンプルな空間で、展覧会の世界観がいかされています

ルフの作品をまとって出かけよう!人気のトートとTシャツ



グッズの中で1番人気のある商品は、トートバッグとTシャツ。中でも「nudes」シリーズの写真を印刷したものは特に人気で、どちらも一時は品切れになってしまったそう。

レジ裏に並んでいてもかっこいいTシャツ
レジ裏に並んでいてもかっこいいTシャツ

Tシャツは小さく折りたたまれて売られているので、おみやげにまとめ買いするお客さまも多いとか。
「Tシャツの写真の部分を全面に見せるかたちでパッケージングしてレジ裏に並べることで、レコードジャケットが売られているようなイメージにしました。」(松林さん)
なるほど、グッズの見せ方にもこだわりがつまっているんですね!
なお、レジの横には、展覧会開催記念として期間限定販売されるルフ作品のエディションも掲出されています。こちらはショップでの店頭販売はなく、公式ホームページから購入が可能です。

ロゴTシャツ。文字が微妙に浮きあがるのがおしゃれです
ロゴTシャツ。文字が微妙に浮きあがるのがおしゃれです
また、展覧会のロゴがプリントされたTシャツは、海外の方に特に人気だそう。ツアーTシャツをイメージしたデザインで、文字はなんとシルクプリントの職人さんが1枚ずつ手摺りで仕上げているそうです。

文字を書くのがもったいない?!天体写真が美しいノートブックとレターパッド
ショップの中で印象的だったのは、壁に貼られた「Sterne」シリーズの《16h 30m/-50°》。

近くで見ると、何枚もの紙に印刷されたものが並べられて出来ていることがわかります
近くで見ると、何枚もの紙に印刷されたものが並べられて出来ていることがわかります

これは、オリジナルノートブックとレターパッドの全ページを並べたもの。それぞれ、《16h 30m/-50°》を100分割したものが1ページごとに印刷されており、パズルのように全ページ繋ぎあわせると1つの作品が完成するようになっています。
こちらも田中義久氏がデザインを手がけており、作品選びにもこだわりが。元の作品が”宇宙空間を切り取って写真にした”ものであったため、それをさらに細かく分割することで、作品のコンセプトとリンクさせたそうです。ノートをめくっていくと、宇宙から切り取られた天体の写真をさらに覗きこんでいくような感覚が味わえます。1ページとして同じページはなく、まるで絵本を読んでいるよう。ショップを訪れた際には、ぜひ手に取って見てみてください!

ルフの作品の上でごはん、も夢じゃないかも?オリジナルレジャーシート

『トーマス・ルフ展』に行った際には、美術館の外にも要注目。こちらは、美術館の前庭に飾ってある、ルフの作品をほぼ原寸大でプリントしたレジャーシートです。(※晴天時のみ前庭に展示)

 レジャーシートの上では、自由にくつろいだり写真を撮ったりすることができます
レジャーシートの上では、自由にくつろいだり写真を撮ったりすることができます

こちらも製作するうえで、この大きさのレジャーシートに印刷・コーティングを行うのはなかなか大変だったとか。原寸サイズの販売はありませんが、会期中、ショップにて約1/2サイズのものが受注販売されています。

今回お話を伺って、グッズのデザインから見せ方まで、「RUFF SIZE SHOP」にはさまざまなこだわりが詰まっていることがわかりました。グッズには作品のコンセプトが生かされていることを知って、グッズを見るのがより楽しくなったと同時に、もう一度展示をじっくり見てみたいと思いました。展覧会のショップやミュージアムショップを通して、展覧会をまた違った側面から楽しむことができるかもしれません。

『トーマス・ルフ展』は11月13日(日)まで開催中です。展覧会を楽しんだあとは、ぜひショップにも注目してみてください!

[TABインターン] 小原菜実子: 美術史を専攻している大学生。アイルランドでケルト美術に魅せられたのをきっかけに、西洋中世美術を中心に勉強中。埼玉県民であり、関東の第3位は千葉ではなく埼玉だと思っている。3度の飯よりダンスが好き。

TABインターン

TABインターン

学生からキャリアのある人まで、TABの理念に触発されて多くの人達が参加しています。3名からなるチームを4ヶ月毎に結成、TABの中核といえる膨大なアート情報を相手に日々奮闘中! 業務の傍ら、「課外活動」として各々のプロジェクトにも取り組んでいます。そのほんの一部を、TABlogでも発信していきます。