国際交流基金(ジャパンファウンデーション)は、2017年5月13日から11月26日にかけてイタリア・ヴェネチアで開催される「第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展」の日本館代表に、作家の岩崎貴宏、キュレーターの鷲田めるろの選出を発表した。
岩崎貴宏は、日常的に身の回りにある雑巾や髪の毛といった素材を繊細な手仕事によって「見立て」のように別のイメージを重ねることにより、ものの見え方の転換を計る作品を制作している。
企画タイトルは「Upside-down Forest / 逆さにすれば、森(仮)」。2階層になっており、上からも下からも作品を鑑賞できる日本館独特の建築の面白さと対話した展示を目指す。日本の都市や地方、ヴェネチアの海と陸といった対比を表現し、空間内に複眼的に展開。
展示プランは、工業地帯や海洋、岩崎の出身地である広島の厳島神社を見立てた《アウト・オブ・ディスオーダー》2点、《リフレクション・モデル》1点、《テクトニック・モデル》1点の計4点の新作を中心に構成する予定。
キュレーターの鷲田は岩崎について、「日常的素材、見立て、繊細な手仕事といった岩崎の作品の特徴は、日本的とも言える。だが同時に、広島で生まれ、現在も広島を拠点に制作を続ける岩崎にとっては、こうした特徴は広島という特別な都市の歴史とも関係している。岩崎が身の回りのものを使うことには、原爆によって変形し、意味を変えられてしまった日用品からの影響がある。見方によって同じものを別の意味に読み替えることは、広島が原爆の前後で軍事都市から平和都市へと180°意味を変えたことを踏まえている。
さらに岩崎は日本の地方が置かれた状況とも向き合ってきた。発電所から山をつたって都市部へと電気を運ぶ電線の鉄塔や、海沿いに押しやられた化学工場群といったモチーフの選択は、地方からのまなざしを示している。」と語る。
岩崎貴宏(いわさき・たかひろ)は、1975年広島県生まれ、広島県在住。広島市立大学芸術学研究科博士後期課程修了。エジンバラ・カレッジ・オブ・アート大学院修了。
2015年、ニューヨークのアジアソサエティにて個展、同年、黒部市美術館と小山市立車屋美術館で個展を開催。第10回リヨン・ビエンナーレ(2009)、ヨコハマトリエンナーレ(2011)、第7回アジア・パシフィック・トリエンナーレ(2012)、2013アジアン・アート・ビエンナーレ(国立台湾美術館)、第8回深圳彫刻ビエンナーレ(2014)などの国際展、「六本木クロッシング2007 未来への脈動」(森美術館、2007)、「日常の喜び」(水戸芸術館現代美術センター、2008)、「trans×formーかたちをこえる」(国際芸術センター青森、2013)、「日産アートアワード2015」(BankART Studio NYK)などグループ展への参加多数。
鷲田めるろ(わしだ・めるろ)は1973年京都府生まれ、東京大学大学院美術史学専攻修士課程修了。金沢21世紀美術館キュレーター。地域や参加をテーマに現代美術や建築の展覧会を企画している。主な企画に、妹島和世+西沢立衛/SANAA(2005)、アトリエ・ワン(2007)、イェッペ・ハイン(2011)、島袋道浩(2013)、坂野充学(2016)の個展や、「金沢アートプラットホーム2008」(以上すべて金沢21世紀美術館)などのグループ展がある。
岩崎とは2010年に、金沢青年会議所が主催した「かなざわ燈涼会」にて出品を依頼した経緯がある。
なお、ビエンナーレ全体を指揮するディレクターは、第55回ヴェネチア・ビエンナーレのフランス館代表キュレーターを務めた経験もあるパリ・ポンピドゥーセンターのチーフキュレーター、クリスティーヌ・マセルが内定している。
ヴェネチア・ビエンナーレは、2年に1度の隔年で開催される約120年の歴史をもつ芸術の祭典。約60カ国を越える国々が参加し、自国を代表する気鋭のアーティストをパヴィリオン等で紹介する現代美術の国際展。
第57回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展 日本館展示 概要
タイトル:Upside-down Forest / 逆さにすれば、森(仮)
作家:岩崎貴宏(いわさき ・たかひろ)
キュレーター:鷲田めるろ (わしだ ・めるろ) 金沢21世紀美術館キュレーター
会期:2017年5月13日(土)~11月26日(日)
主催:国際交流基金
ヴェネチア・ビエンナーレウェブサイト
http://www.labiennale.org/
国際交流基金ウェブサイト
http://www.jpf.go.jp/j/project/culture/exhibit/international/venezia-biennale/art/index.html
Text: Kyo Yoshida