世界各国からソーシャルメディア/デジタルメディアを活用した事例が紹介されたカンファレンス、MuseumNext(ミュージアム・ネクスト)に、TABメンバーが参加してきました!
前回のレポートでは、TABメンバーによる発表の様子をご報告しました。今回は、担当が出席したものの中から3つのプレゼンテーション/事例をご紹介します。
世界各国から専門家と最新事例の集まるMuseumNextで、多くのプレゼンターが最も重要な要素として挙げていたのが、ユーザー目線でサービスを考えること。そして必要に応じて外部と協働し、アイデアをどんどん取り入れて、デジタルメディア活用に対する考え方自体を刷新して行くことでした。今回の報告記事では、それを特に強く感じさせられた3件をピックアップしました。
キーワードは「ユーザー目線」!!モバイル戦略をテーマにした基調講演(動画:英語)
アメリカ・国立スミソニアン博物館のナンシー・プロクターは、モバイル戦略をリードする立場から基調講演をおこないました。(発表スライドはこちら。)今回はカンファレンス全体でモバイルやARといったテーマが多く取り上げられた中、その潮流を象徴する講演となりました。
モバイル戦略で何より大切なのは、オーディエンスを知ること。彼らのモバイル利用状況、彼らはなぜ美術館に来るのか、彼らは何を知りたいのか?美術館の考えでプロジェクトを進めるのではなく、ユーザーの目線から戦略を立てることが最も有効な方法です。これはモバイルに限ったことではなく、他の発表でも非常に多くのプレゼンターが、ユーザー目線を重視したサービス開発で結果を出していました。
もしもアートの巨匠たちがソーシャルネットワークサービスをはじめたら?
こちらは実験的ですがちょっと面白い事例。バルセロナのポンペウ・ファブラ大学と、Yahoo!リサーチ バルセロナ社の共同発表です。過去の巨匠の関係性をソーシャルネットワーク風に表現したTimebook。たとえばピカソ。サンプルページを見てみると、影響を受けた/与えたアーティストが一目瞭然です。複数の出来事の関係性はつかむのが難しいものですが、とても分かりやすくなっています。
実は、このアイデアはEUの文化的資料をデジタルアーカイブするEuropeana主催による、ピカソ美術館でのハッカソン(開発合宿のようなイベント)で開発されたもの。「外部の力とアイデア」そして「新しい技術やアイデアに対してオープンであること」。変化の激しい時代だからこそ、新しいアイデアに対しても否定的にならずに取り入れて行くことで、ミュージアムの新たな道が見えてくるのではないでしょうか。
ミュージアムの近未来?ITの可能性を感じさせてくれるアプリ
最後は近未来を予感させてくれる、オランダIN10社からの提案です。身の回りに隠れている様々な文化的情報を、好きな形で取り出すことができるアプリと言えば良いでしょうか?たとえばあなたが時間を持て余した土曜日の、あなたのためだけのお散歩コース。場所や人、時間にひもづけられたあらゆるデータを、有機的に組み合わせて生成されるストーリーは、街に眠る歴史や文化を呼び起こし、街全体をミュージアムのようにワクワクできる場所に変えてくれるかもしれません。
このサービスはまだアイデア段階で、開発仲間を募集中とのことですが、似たコンセプトですでにTateが環境にあわせて作品をオススメしてくれるアプリMagic Tate Ball appをリリースしています。こちらはロケーションや天気などに合わせて、Tateの所蔵作品からオススメを教えてくれるアプリです。(紹介動画はこちら。)
手にしたアプリで、街全体がミュージアム。データやIT技術が広げる可能性を表現するとともに、ミュージアムの在り方についても考えさせられる事例です。また、このようなサービスを実現し、実際にユーザーに利用してもらうためには、ミュージアム分野だけにとどまらず様々な団体との連携が必要不可欠であることは想像に難くないと思います。
近未来は突然やってくるものではなく、ひとつひとつの行動・実践を積み重ねて、自分たちで作り出していくもの。いきなり未来の姿にたどり着けなくても、最初の一歩を踏み出して行くことが重要だと思います。
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上記はごくごく一部で、カンファレンスでは数多くのミュージアムの取り組み、アイデア、サービスが紹介されました。この記事ではあえて実験的な事例を取り上げたのですが、より実践に近く、実際に効果を上げているプロジェクトも多数ありました。そして、世界をリードする大規模なミュージアムから、地域密着の小さなミュージアムまで、工夫しチャレンジする姿勢は共通していました。どの事例も試行錯誤の道のりが伺われましたし、成功をおさめた事例も、始めから分かっていた訳ではなく様々な工夫やアイデアを実践して初めて分かったことも多かったのです。
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