公開日:2012年8月29日

初夏のバルセロナから!TABプレゼン@MuseumNext(動画あり)

TABから世界へ発信。ミュージアムをめぐるサービスで一番大切なこと

TABチーム、バルセロナに到着!
世界各国の美術館が集うカンファレンス、MuseumNext(ミュージアム・ネクスト)がスペイン・バルセロナでおこなわれ、TABメンバーが発表者として参加してきました!MuseumNextは、ヨーロッパ最大のミュージアム分野におけるソーシャルメディア/デジタルメディアのカンファレンスです。(詳しくはこちらの記事を参照)

2日間にわたるカンファレンスには、アメリカやイギリス、オランダ、スペインなど34ヶ国から42の団体が参加。ニューヨーク近代美術館(MoMA)やTateなどといった大規模な有名美術館から、地域密着型の中小規模館、そして私たちのような民間団体までが集まりました。

Tokyo Art Beatを運営するNPO法人GADAGOは、日本から初めての事例発表として応募し、主催からの大きな期待のもと、登壇依頼を受けました(主催から寄せられたメッセージはこちら)。
私たちが日本初のプレゼンターとして紹介してきたのは、iOSアプリ「ミューぽん」です!

Paul Baron and Tomomi Sasaki from MuseumNext on Vimeo.

私たちのプレゼンテーションは、ミューぽんの運営母体であるNPO法人GADAGOの紹介からスタート。アート・デザインをライフスタイルの一部として人々に楽しんでもらうため、Tokyo Art BeatTokyo Art MapTAB公式アプリなど様々な活動をする中で、「iPhoneで持ち歩ける美術館の割引券」という発想が生まれました。

ミューぽんの特徴は、単なる割引アプリではなく、利用者の行動・体験を考えてデザインされていること。TABチームは、全員がアートイベント好きで、自らがユーザーです。ユーザーの目線から、どんな機能があればもっと美術館に行きやすくなるか?行きたくなるか?美術館での体験をもっと楽しめるか?ということを、いつも考えています。

そんなミューぽんの思想について、Twitterではこんなコメントも寄せられました。


—— 「ミューぽんは、アートファンにとって本当に役に立つ、本来の価値に重きを置いてサービスを提供しているところが素晴らしい。ユーザーのニーズをよく考えてくれているし、刺激的。」


—— 「Tokyo Art Beatの良いところは、ゲーミフィケーションではなく、アートファンにとって本当に有用であること。そこを大事にしているから、ユーザーと本当の信頼を築けている。」

挑戦的なサービスを始める際に重要なことの一つは、長期的な視点でどのように維持継続させるかということ。プレゼンテーションでは、サステナブルなプラットフォームとしてのミューぽんを構築していくために、私たちがどのような方法をとっているかを紹介しました。

カンファレンスでは、美術館に所属する方々による発表がメイン。そんな中で私たちの活動の特色の一つは、NPOとして第三者の立場で美術館とかかわっていることです。ミューぽんは、美術館側から見ると、開発のリスクやコストをかけずにiPhoneアプリに参加できるという利点があります。
孤軍奮闘するのではなく、外部とコラボレーションしながら運営することで、新たな視点とパワーを得ることができるのです。

質疑応答は、MoMAと一緒に受けました。GADAGOの発表については、世界の他の都市でも応用が利くのではないか?などといった質問が飛びました。

ペアで発表したMoMAのアレグラ・ブルネット(右から2番目)と。一番左は司会を担当してくれたスペイン国立カタルーニャ美術館のコンチャ・ロダ。

サービスを考える上で一番大切なこと

今回、私たちTABの発表を含め、多くのプレゼンターが「ユーザー目線でのサービス開発」と「外部とのコラボレーション」を最も重要な要素として挙げていました。

各国の美術館とも、失敗を恐れることなく外部との恊働やデジタルメディア活用にチャレンジし、活発な議論が交わされていました。また、大規模なミュージアムの発表で特に印象的だったのが、デジタルメディア活用を率先してリードしていく姿勢。戦略内容だけでなく、館としての役割も考えた上で取り組んでいると感じました。

ミューぽんとTokyo Art Beatは日本国内で、数多くのミュージアムに支えられ、良い関係を築きながら運営しています。しかし時にはその中で、日本特有の既成概念や組織の課題を感じることもあります。
今回、世界各国から専門家の集まるMuseumNextで多くのプレゼンターが一貫して語っていたことは、大切なのは美術館の都合ではなく、来館者にとって便利であるかどうか、来館者にとって興味があるかどうか。そして必要に応じて外部からもアイデアをどんどん取り入れて、デジタルメディア活用に対する考え方自体を刷新して行くこと。めまぐるしく技術が発展し変化の激しい世の中では、より良いサービスを模索するにあたり多少のリスクをとることも覚悟しながら進めていく必要があると思います。

日本でも、MuseumNextでの議論のように、未来を見据えた議論がよりオープンに活発化していくことを願います。既成概念を取り払い、組織をこえて、あらゆることに取り組むことができれば、ミュージアムはより魅力的な場所になるはずです。

次回の記事では、MuseumNextで面白かった事例をいくつかピックアップしてご紹介します!お楽しみに。
また、MuseumNextのTwitterfacebookでは随時、プレゼンテーションの動画などの情報が発信されています。ぜひチェックしてくださいね!

MuseumNext 公式サイト
http://www.museumnext.org/

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プレゼンテーション動画
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プログラムの概要
http://www.museumnext.org/conference/museumnext_barcelona_programme.html

chiquichika

chiquichika

ブラジル生まれのスペイン育ち、帰国後から東京在住のアートファン。2010年より5年間、Tokyo Art Beatのスタッフとして勤務。現在は、2歳になる娘とどんぐり拾いやアートめぐりを楽しんでいる。