コンテンポラリー・アートという枠で考えるならばこうした光景はあまり目にせず、大きな展覧会ないしは有名ギャラリーでの展示が当たり前となっている。そのため、いわゆる「民衆」にとって敷居がやや高い。その高さがやや低まるのが「国際」という名の付いたアート関連のイベントである。
メイン会場となっているアーティストセンターでは、ビエンナーレの第1週目に建築・インテリア関係の会社がブースを設け商品や企画のプレゼンが行われ、文字通り見本市の活況を呈していた。ただ、アートの文脈に乗るような展示はアーティストセンター外回廊の 〈 国際パヴィリオン 〉 と別会場となっている建築美術館での〈 ロシア・パヴィリオン 〉、同時開催のプログラム 〈 自立都市 〉、〈 衰退都市 〉、〈 騒音都市 〉、〈 CIS諸国建築家による展示 〉、〈 建築状況-ノエフ・コフチェク展 〉である。ただ、「 国際ビエンナーレ 」での目玉であるはずの〈 国際パヴィリオン 〉の割合がモスクワに関する展示に比べ、圧倒的に少ない。この点は第一回であるが故、致し方のないことではあるが、今後改善されるべき点であろう。
アートの文脈に乗せることを狙いとした〈 建築ビエンナーレ 〉が、人気作家によって活況を呈するモスクワ・アートシーンよりも全体企画の点で優っているのは面白い。裏を返せば、コンテンポラリー・アートという枠で活動する作家の地位が確立されつつあり、作家側もその地位から外れるような作品をあまり出さないという側面が垣間見える。もちろん、そうでない作家もいるのだが、今回の〈 アート・モスクワ 〉で出展されたアーティストの中には皆無に等しい。こうした空気に風穴をあけるのが、いわゆる厳密な「 アート 」外の分野にある建築という関係がこの二つの展示から看取できる。