《HOTO》は高さ5.5メートル、直径2.2メートルという巨大な作品だ。鏡のように見る者を映し出す素材で出来たパーツが何段にも重なりあっているようなフォルムをしている。圧倒的な存在感をもつ物体の表面には色とりどりの無数のLEDのカウンターが付けられている。《HOTO》とは「宝塔」であり、その作品はまさに巨大な宝の塔であった。宮島自身の言葉をして「異例な大きさ、過剰な装飾、異常な形で作られる作品」であるとして、「そこまでしなければ伝えられないもの」、「人間一人の『命』のことを表している」という。展示スペースを満たす柔らかい光は頭上はるか高くに位置する、ベースが白く発光するカウンターから発せられている。その光と作品が持つ静謐な存在感に満たされた空間で、私と《HOTO》は向き合った。
そして大小さまざまのLEDカウンターはそれぞれの色を放っている。《HOTO》を構成しているそれぞれの段の持つ個性により、上へ上へと伸びていく絵巻物が出来上がっている。一番目の段は緑芽吹く大地に水、ちょうど目の高さにくる二段目には人間が、そしてその上に重なる三段目には白い雲が流れる青空が広がっており、その上の、青空よりはるか遠く高いところには、星がこぼれんばかりに光っている。これは宇宙なのだ。宇宙といってもロケットに乗った宇宙飛行士だけが行ける場所としての宇宙ではない。足下に踏みしめる大地、吹く風、晴れた大空、そして星。生きている一人の人間と、その人間を取り巻く全ての事象を総合した名称としての宇宙だ。
話す順番が前後するが、この「Art in You」展は、暗闇の中に真っ赤なカウンターが一列に並んだ作品《Death of Time》から始まっている。連綿と続くそのカウンターの列には見る者を釘付けにするパワーがあるのだが、それは赤という色が人間の中にある原初の感情を揺さぶるからであろう。なぜなら赤は血の色であるからだ。人間の体内を流れる血潮の色だ。人間の内なる火であり、マグマの色だ。赤は人間なのである。《Death of Time》から始まったというこの展示のコンテクストの中では、《HOTO》で使われている赤いカウンターもそれ自体が人間であると考えられる。赤い色をしたカウンターは他の色のカウンターと、そしてそれだけではなく、他の赤いカウンターと共に様々な文様を織り成し、調和を示す。宇宙の秩序の中に存在する人間が表現されている。しかしこの作品の人間観はそこで終わってはいない。見る者の姿を映し出すボディーは作品と人間を一体化させるものであり、眼前に広がる作品―宇宙―と自分が一(いつ)であるということを知るのである。それに気付いた時、見る者は永遠の宇宙であるところの自分の存在の大きさに思わず息をのみ、そして深い温かさに包まれるのである。
Hana Ikehata
Hana Ikehata