TAPは取手市在住作家の活動の紹介する「オープンスタジオ」と若手の作家を紹介する公募展をそれぞれ隔年で実施してきたが、昨年6月より駅前のショッピングセンター内にTAPサテライトギャラリーを設けて若手作家の紹介に努めるなど、プロジェクトとしての継続性がよりよい形となりつつあるように見える。
今年のTAPは公募展の年にあたるが、ゲスト・プロデューサーとして野村誠、藤本由紀夫、ヤノベケンジの3人が招かれ、自身の作品を含めたプロジェクトを公募選出のアーティストや企画参加者(小学生や70歳代の市民など「アーティスト」ではない応募者も作品アイデアなどで選出されている)と共に展開している点が特徴的である。
さらに特筆すべきは公募選出数の多さで、2004年の11名(コンペ招待作家3名を含む)に対して今年は39組。しかも、そのうち21組はヤノベがプロデュースを行い、メイン会場として使用されている旧戸頭終末処理場で行われている「終末処理場プロジェクト」への参加である。
これをヤノベがある意味自らの作品としてプロデュースしていくことには、否定的な意見もあるだろう。例えば、「ヤノベケンジプロデュースの」といったくくりで個々の作品を露出するべきではないだとか、施設を作品で「埋める」ために選出アーティストが増やされたことで、個々の作品に求めるクオリティが下がっているのではないか、などなど。
しかしこれらの条件を受け入れて各アーティストはプロジェクトに参加しているわけだし、結果を見てみればこのプロデュースの方向性は成功していると言える。施設の内外各所にサイトスペシフィックな作品がインストールされ、この特殊な現場で制作に注がれたであろうパワーが伝わってくる。
しかもこういった場でありがちな、サイトの特殊性に頼りきった作品、プロデュースの方向性に迎合しすぎている作品などはあまり見受けられず、それぞれの作家性を損なうことなく展開できているものが多く、公募とは思えない見ごたえがあった。
晴天時、利根川沿いで体験できる相澤和広《ふうせんサウンドプロジェクト「巨人の耳」》も、大きな風船の両側につけたマイクで上空の音を聴くというシンプルにしてダイナミックな作品だった。
筆者が足を運んだのは内覧日だったため、野村誠によるプロジェクトは映像でしか体験することはできなかったが、会期中にも17組のメンバーと共に様々なイベントを行うとのこと。例えば今週末19日には、同じくプロデューサーである藤本とヤノベに加え、過去の出展アーティストであり、取手で継続的にワークショップなどを行っている椿昇、藤浩志らを招いて1dayパーティーを行う。
都内から取手へはアクセスが良いとは決して言えないが、1年に一度の取手市の取り組みの成果、ゆっくりと時間をかけて体験して回りたい。
展覧会の詳細:取手アートプロジェクト2006
Makoto Hashimoto
Makoto Hashimoto