公開日:2007年6月18日

カルティエ現代美術財団コレクション展

カルティエのコレクションは徹底している。1984年の設立以来、同時代の美術だけを対象にしてきたという。しかもその多くはコミッションワーク(注文制作)。形だけのメセナ活動ではなく、積極的に創作に関わってきたのだ。

コレクション展というと、たいていは絵画や小さな彫刻が中心で小さく納まりがちであるが、建築といってもよいくらいの大きなサイズの作品や本格的なインスタレーション、自家用ジェット機の原寸模型を含むこの展示を見て、その姿勢を確認することができた。

ジュエリーブランドらしく、ライザー・ルーやジャン=ミシェル・オトニエルなどビーズやガラスを使ったきらびやかな作品、リチャード・アーシュワーガー(クエスチョン・マークの作品)やマーク・ニューソン(ジェット機模型)、川内倫子(写真)などスマートな表現で視覚を満足させてくれる作品が目立つ。

しかし、当然それだけでは終わらない。ロン・ミュエク(巨大な女性がベッドに横たわっている作品)やパナマレンコ(少したよりない形態をした潜水艦のオブジェ)、トニー・アウスラー(ボールに目玉の映像が投影されている作品)など、意欲的なテーマを打ち出すグループショウでも、その文脈を非常に深遠なものに高めているアーティストによる作品が、申し分ない規模で展開されているのも必見である。日本でこれらのアーティストの作品が見れる機会は非常に少ない。

他にも、若すぎるアーティストの作品や、企業が持つには少々思い切りのいる作品、他ではあまり見られないスタイルで収められているアーティストの作品など、なかなか驚きのコレクションを見ることができる展覧会である。

Makoto Hashimoto

Makoto Hashimoto

1981年東京都生まれ。横浜国立大学教育人間科学部マルチメディア文化課程卒業。 ギャラリー勤務を経て、2005年よりフリーのアートプロデューサーとして活動をはじめる。2009〜2012年、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)にて「<a href="http://www.bh-project.jp/artpoint/">東京アートポイント計画</a>」の立ち上げを担当。都内のまちなかを舞台にした官民恊働型文化事業の推進や、アートプロジェクトの担い手育成に努める。 2012年より再びフリーのアートプロデューサーとして、様々なプロジェクトのプロデュースや企画制作、ツール(ウェブサイト、印刷物等)のディレクションを手がけている。「<a href="http://tarl.jp">Tokyo Art Research Lab</a>」事務局長/コーディネーター。 主な企画に<a href="http://diacity.net/">都市との対話</a>(BankART Studio NYK/2007)、<a href="http://thehouse.exblog.jp/">The House「気配の部屋」</a>(日本ホームズ住宅展示場/2008)、<a href="http://creativeaction.jp/">KOTOBUKIクリエイティブアクション</a>(横浜・寿町エリア/2008~)など。 共著に「キュレーターになる!」(フィルムアート/2009)、「アートプラットフォーム」(美学出版/2010)、「これからのアートマネジメント」(フィルムアート/2011)など。 TABやポータルサイト 「REALTOKYO」「ARTiT」、雑誌「BT/美術手帖」「美術の窓」などでの執筆経験もあり。 展覧会のお知らせや業務依頼はhashimon0413[AT]gmail.comまでお気軽にどうぞ。 <a href="http://www.art-it.asia/u/hashimon/">[ブログ]</a>