エスパス ルイ・ヴィトン東京は、その第5回目となるエキシビションにて、世界的に活躍するブラジル人アーティスト エルネスト・ネトを迎えます。エスパス ルイ・ヴィトン東京において3度目の個展となる本展では、ネト自身のキュレーションを通じて、高い天井とガラス張りの壁面を持つエスパス ルイ・ヴィトン東京の空間を再構成・再解釈します。
エルネスト・ネトは、1980年代後半より作品の発表を始め、伸縮性のある薄い布地や香辛料などのユニークな素材を用いた有機的な立体作品やインスタレーションで知られています。本エキシビションのタイトル『Madness is part of Life』は、現代社会における政治的な正しさや生産性が、狂気を隠蔽してしまっている状況を指しています。本当の「正しさ」は存在するのか、むしろ狂気こそが私たちの中や周囲に宿る情熱そのものかもしれないのではないか、とネトは提起します。
本展示の中心となる作品『A vida é um corpo do qual fazemos parte(われわれは生という体の一部)』は、精子を表す通路部分と卵子を表す居住空間という2つの要素で構成された巨大なインスタレーション作品です。動物の体内を象徴する本作品の壁の膜は、螺旋状のかぎ針編みの細胞から成ります。来場者は、宙吊りになった通路の上を歩いたり、座ったり、寝転んだりすることで、ガラスに囲まれた空間から周囲の景観を再発見すると同時に、浮遊しているような感覚や眩暈を感じることができます。私たちの「安定性」を問いかけるとともに、私たちの存在自体が「生(Life)」という体の一部であるということをテーマとした作品です。
その他、壁に据え付けられた『Linhas pontos e patas(線、点と脚)』、1980年代の『Prumo(下げ振り)』と『Peso(おもり)』作品を想起させる『TorusMacroCopula(トルスマクロボールト)』、そして伸縮性のある素材を用いた複数のボールの集合体『Pedras(石群)』といったインスタレーション作品が並びます。
これらの作品はいずれも、来場者に見て、座り、触わり、歩き、嗅ぎ、考えることを促すと同時に人間性をテーマとして取り上げます。モノの重みを通じて、現実認識として想定された人間性は「身体を通じての関係性の構築」(physically structured in the relation)とも呼ばれます。ネトにとって、パーツを組み合わせることは、頭の体操であるだけでなく、身体的操作でもあります。来場者に味わっていただきたいのは、この身体的次元であり、また、空間と生のこの特有の理解方法です。
これら4作品に加え、ネトは自身の弟子である新進のブラジル人ビデオアーティスト、エヴァンドロ・マシャードを招き、セミフィクションのアニメーション作品を紹介します。
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