GALLERY SPEAK FORおもにファッション誌や音楽誌、ファッションカタログなどで撮影を手がけている米田樹央氏は、クリアな画面構成と美しい色彩表現を伴ったファッション写真で定評を得てきました。空々しいモード感よりはリアリティを大切にしながらも、柔らかい光で被写体を優美に包む洗練された手つき、時に女性的なほどナイーブに構築された微かなハピネスさが彼の写真の魅力になっています。
写真におけるキャリアとは別に、ミュージシャンも志したことがある彼は、音楽がその風土の中にしっかりと根付いている南米、特にキューバに親近感を持ち続けてきました。今年3月に初めてキューバへの旅に出発。おもに首都ハバナに滞在しながら、多くのランドスケープ、人々のポートレートを活写して戻ってきたところです。
キューバといえば私たちは条件反射的に、革命ゲリラの英雄チェ・ゲバラや、カストロの歴史的な蛮勇ぶりを定番アイコンとしてイメージしがちです。欧米諸国の野心を跳ね返してきた民族の誇りの長い物語は、グローバリズムの風で吹き溜まったような、貧しくも魅惑的なハバナの街を彩っていますが、米田氏のカメラはあえて仕事での撮影と同じような、やわらかな光の援用をもってその風土と大衆へ向けられ、優しい眼差しに満ちた写真を生み出しました。革命の残り香を探求せず、自らのリアリティ以上のものを追わないスタンスが、逆に私たちの心へも、かの国のエッセンスをヴィヴィッドに送り込んでくれるのです。
本展「FIFTY」では、そのキューバの写真を中心に近作プリント約40点を発表。タイトルはキューバ革命50周年の今年を指しているのみならず、米田氏がこだわって愛用する、人の視野に最も近いフレーミングを実現する「50ミリ」レンズをも表しています。2009春夏シーズンに「チェ・ゲバラ」をテーマに自身のコレクションを展開したファッションデザイナーの小村和久氏も彼の写真に共感し、本展のためにオブジェ・インスタレーションを制作して発表いたします。
まだコメントはありません